一応、俺と獄寺は付き合っている。 告白も、何にもなかったけれどそういうことになってる。 屋上で、いつものようにだらけていて、たまたまツナが休みだったかなんだかで2人だけだった。 必死の思いで、日陰を何とか見つけて座り込んでみても、アスファルトの熱が伝わってきて、 涼しくもなんともない。 風もない。 夏に焼かれている気で、げんなりしていた。 ボールを追っかけて走り回ってるときとは、全く別な感覚。 熱さに負ける。走ってると、風だって感じるもんなぁなんて思っていた。 ふ、と獄寺との距離が不自然に近づいた。え!?と思う間もなく、唇が重ねられた。 目が、まんまるになったと思う。 あ、獄寺、まつ毛がなげぇ!!なんてことを確認している位、がっちり目を開けていた。 「つまんねぇ。」 口調は、授業がつまんねぇってぼやくのとたいして変わりなかった。その時の紅い唇は、はっきりと覚えている。 「へたくそ。」 にやっと、笑った。 その頬が、赤くなっていて、それを隠すように顔をそむけたこともなぜかしっかり確認していた。 なのに、できたのはぽかぁんと、口をあけてることだけ。 あれだけ口げんかやら、プチ殴り合いの相手の唇だったのに、それは、あったかくて、柔らかくて。 ふわり、と触れていっただけなのに、心臓の音だけがバクバクうるさくて。 「な・・・・・。な・・。なにしたんだよ!!」 「何って、キスじゃねぇか。野球のしすぎでキスもわかんねぇのかよ?」 ファーストキスってわけじゃないから驚く必要はない。 口を開けば、小憎らしい事ばかり吐き出す口がこんな感触を持っていることなんて全く考えたこともなかった。 獄寺の口なら、逆にとげが生えてたり(あるわけないけど)苦かったりした方がしっくりするぐらいだ。 そう思ってた。 なのに、気になっていた。視界の端に獄寺をとらえていることも今思えば多かった。 それは、友情だと信じて疑わなかった。 けど。 挑発するようにくっ、と細められた視線にやられていた。 一瞬だけ強くにらんで、すっと、俺の上から離れていったそれに。 誘うっていうのは、こういうことだって初めて分かった。背筋がゾクッとなって、その後は、ほんの少しの空白。 バクバクする心臓のまま、今度は、ぎゃくに中途半端にはだけた学ランをつかんで 俺の方から、もう一度キスをしていた。 それじゃおさまりがイマイチ悪くて、その色素の薄い頬に手をあてた。 夏だというのに、汗をほとんど書いていなくて逆にひんやりとした体温が伝わってきて、それにもどきまぎする。 唇がかすかに開いて、俺を受け入れた。 歯がぶつかるなんて恰好悪いことにならなかったのは、単純に獄寺のが上手だったからだと思う。 気がつくと、俺の胸元をきゅっと獄寺の指先が握りしめているのに気がついたとき、俺は素直に嬉しかった。 さっきと同じに長いまつげが揺れたのを感じた。今度は、目ではなく触れた肌で。 小さく漏れる息も。、やけに甘く聞こえた。 「返事は。これで、OKな。」 思いのほか余裕のある声が出せて心底安心した。 そして、「ああ。」という短い返事が続いたことも。 それが始まり。 なんにもドラマチックでもなんともない。 大体、そんなに俺たちの日常は変わらなかったのだから(残念だと思ってるのは確かなの)
べたアマです。最初は、山←獄なはず。きっと、必死だったのは、獄寺のほう。
だけど、それすら気付かないへたれにぶちんな感じで。
一応夏。ver冬に続く。
[11年2月1日]